毎日新聞2004年7月13日
ここだけの話:被害者の人権

あの男が……週刊文春(7月15日号)を読んでがくぜんとした。

あの男が15年たって、また「逮捕監禁致傷」の容疑で逮捕されたと報じている。許せない。

1988年11月25日夜、アルバイト先の工場から自転車で帰宅する17歳の女子高校生に男が言いがかりをつけた。自転車をけり倒す。そこへ別の男が現れて、少女を助ける。少女は“善意の男”のバイクに乗せてもらった。

しかし、2人の男はグルだった。彼女を東京・綾瀬の民家に連れ込み、新たに2人の仲間が加わって、殴りけり、毎夜、集団強姦(ごうかん)した。食事はろくに与えず、体にライターで火をつける。壮絶な暴行は41日間続く。少女は衰弱死した。男たちはドラム缶とセメントを盗んで来て、遺体をコンクリート詰めにした。

15年前の綾瀬コンクリート詰め殺人事件。あまりの惨(むご)さに泣いた。人間に、こんなことが出来るのか。野獣だ。4人を極刑に!と思った。少女の親だったら、やつらを引き裂いても許さなかったろう。

4人は何と16歳から18歳の少年だった。少年法が「野獣」に味方する。当時、サンデー毎日の編集長だった僕はあえて彼らを「野獣」と書いた。

それが、世に言う「人権派」を刺激した。「加害者の人権を無視している」というのだ。彼らの集会に顔を出せば、つるし上げを受ける。当時、人権は錦の御旗(みはた)。ここだけの話だが、オウム報道で知られるライターの江川紹子さんでさえ「加害者の人権を無視しているのではないか?」と取材に来られた。僕は「野獣としか表現できない」と応えた。

被害者の人権はどこにあるんだ! それから15年。少年刑務所に送られたサブリーダーの「あの男」は出所して、今年6月4日、また逮捕監禁致傷の容疑で逮捕された。「野獣」は少年法をあざ笑うように……。

あの少女の親は何と言うだろう。

この7月、サンデー毎日は、あのころ、活躍した越川健一郎を編集長に迎えた。彼は初めての編集長後記で「キーワードは健全な懐疑主義で行く」と書いた。「守らなければならない人権」とは何なのか。懐疑する編集長に一言。週刊文春には負けるなよ!【牧太郎】



女子高生コンクリート詰め殺人 - 2chライブラリー